轟破天学会

キングダム・オウ禍武斗/轟破天九十九語 に関する研究成果置き場

「刃鬼使うなら轟破天でよくね?」という主張への反証から見る現代の轟破天の強み・弱み

要旨

  1. 良くない(個人の感想です)その2
  2. プレイしやすさの差がデッッッカイ
  3. 確実に複数展開したいだけなら轟破天側に分がある(展開しやすいわけではない)
  4. 継戦能力の差もそれはそれはデカい
  5. ファンの差さえデカいことによって生じるmanyデカい壁
  6. 轟破天がこの先生き残るためには

 

序論 ~良くない~

 村民・ワッチャプリマジ・まんじゅうです。プリ☆チャンロスの悲しみを搔き消してくれる新たな女児アニメの風を受け、私は強く生きていきます。相当数のいい歳した大人達が狂わされているプリティーシリーズ、騙されたと思って見てみてね。

 

 轟破天というデッキタイプ(以下【轟破天】)、または刃鬼というデッキタイプ(以下【刃鬼】)で遊ぶ・構築を考える・または情報を集めるにあたって、

 「【刃鬼】使うなら【轟破天】で良くね?」(長いので以下「甲」と呼称します)

 という言葉を耳にしたこと、ありませんか?

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今回大体ヨイショされる人と大体逆ヨイショされる人

 パッと見パワーと握り拳位しか共通項の無さそうなこの2枚、何故度々壇上に立たされて互いのスペックを比較されてしまうのでしょうか。

 それは偏に、「1枚で」「大量のクリーチャーを展開する」「高コストなカード」という3つの円を重ねたベン図において、この2枚が特に近しい場所に位置するからに他なりません。

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これがベン図 こっちはグレイトフル・図

 実際、巨視的には役割に大きな違いは無いでしょう。であれば単純に、「ガチンコジャッジに左右されず」「マナから確実に決まった量のクリーチャーを展開できて」「刃鬼よりコストが1小さい」轟破天は刃鬼の上位互換と言ってしまって良いのでしょうか?

 

 答えはNoです。絶対にNoです。轟破天が本当に刃鬼の上位互換足り得る瞬間など、現代においてそう何度も立ち会えないと私は考えています。

 この記事では、そう考えるに至った具体的な根拠を書き連ねていきます。日頃から甲に悩まされる刃鬼愛好家の方の支えになれば、そして甲的思考に支配されてしまった人々の止まった思考を動かすきっかけになれば幸いです。

 

 ※予防線。この記事で語る意見はあくまでも個人の感想です。あんま良くないぞ的な文言は並べていますが、全プレイヤー一生これ言うなよ!みたいな温度の語りでは全く無いので、こう考える人間がいるんだな程度の気持ちでご覧下さい。私の【刃鬼】に関する知見は【轟破天】のそれより圧倒的に少ないので、そちらも何卒ご容赦ください。

 一読するでもしないでも、それでも甲的発言を発信していくんだという意思があるなら、止める理由も権利も私にはありません。甲がウケるような身内環境に対してなら、自由に使えば良いのではないかと思います。交流の浅いor無い相手に投げつけたりネットの海に放流するのは、ナイスコミュニケーションが生まれる未来が見えないのでやめるべきだとは思いますが……。

 

 本論 ~良くない理由達~

①大前提 ~そもそも甲的発言を投げかけるべきではない相手~ 

 甲への反証を挙げる前に、簡単に前提条件を定義します。この項は「vsシャコorユニバースで良くね?」記事の冒頭とほぼほぼ同じ内容なので、既にご覧になっている方はこちらから次項に移っていただいて問題ありません。

 

 この記事では、「CSのような競技性の高い環境で【刃鬼】を使って勝ちたいという願いを叶えるにあたって、クリーチャーを一気に多数展開する手段としての刃鬼が轟破天の下位互換ではない理由」をメインに述べていきます。

 

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ほんわかCSイメージ図

 兵ひしめく勝者が正義な環境に飛び込むのなら、こういった言葉が飛んでくるのは然もありなん。そもそも勝ちたいだけなら、【刃鬼】も【轟破天】も余りに斜陽ですからね。むしろ不意打ちをキメに行くチャンスと捉えて、凝り固まった世間のイメージを利用してしまいましょう。

 ただ甲的発言を聞き流すだけではなく、どういった理由で自分がそれらのデッキを使用しているのかを説明できると尚良いですね。長所とその活かし方を理解しておけば、デッキ構築の助けになってくれるでしょう。

 

 わざわざこの前提条件を説明したのは、そもそも「大会でたくさん勝ちたい!と叫んでいる訳でもないプレイヤーに対して甲的発言をすること自体が酷くナンセンスな行為である」という思いが根底にあるからです。

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ワイワイイメージ図(いい感じのやつトランプしか見つけらんなかった)

 月並みな言葉ですが、価値観は人それぞれ違うもの。当然のことながら、全てのプレイヤーが常勝無敗を信条にしている訳ではありません。

 誕生から20周年、多種多様なカードが生まれてきたデュエル・マスターズ。豊富なカードプールからお気に入りの40枚を選んでワイワイ楽しもうとしている人に、甲的発言は果たして必要なものなのでしょうか。

 「こういう勝ち方もあるんだぜ」という温度感での例示は相手の助けになりそうですが(そもそも甲的発言からそのような温かみを感じ取るのは中々に困難ですが)、この場合は発言者の中にある楽しみ方の押し付けになってしまいませんか?

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悪意のイメージ図

 友人とワイワイスマブラを遊んでる時に、急に現れた知らん人が「Tier1キャラは○○なのになんで使わないの?そいつ雑魚じゃんw」みたいなこと言ってきたらめちゃくちゃ白けませんか?……この例えだと恐怖の方が先に立ちそうですが。

 他人の構築にどんな悪辣な思いを抱いても、誰からも咎められることはありません。思想は自由です。しかしそれを表に出してしまったら、無用な負の感情が生まれてしまいます。戦争だろうがっ‥‥‥!

 アドバイスを求めているでもない相手に一方的に投げつけるそれは、自分以外を冷めさせる兵器となるでしょう。ひけらかす知力よりも、コミュニケーション能力を伸ばした方が皆幸せになれるはずです。前置きここまで。

 

②前提条件 ~注目すべきポイントの洗い出し~

 序論でもサラリと触れましたが、「マナを貯めて」「高コストなカードを1枚プレイして」「複数体クリーチャーを展開することでフィニッシュする」という大枠の中で見れば、刃鬼も轟破天も本質は同じであるはず。……こうガッツリ触れると、双方のファンから囲んで棒で殴られそうな話でもあるのですが。

 両雄を別のカードたらしめているポイントは、

  1. カードそのもののプレイしやすさ
  2. 実際にプレイした場合、確実に勝負を決められるのかどうか
  3. プレイした後に勝ち切れなかった場合のリカバリー力・継戦能力の高さ

 この3点の差であると私は考えています。ここからは順を追って、【刃鬼】と【轟破天】それぞれの視点からこれらのテーマについて考察していきましょう。

 

②-1.カードそのものプレイしやすさ

 まずは「後の多面展開のことは考えず、純粋に刃鬼と轟破天のどちらが実際にプレイしやすいのか」について考察をやっていきましょう。

 

 刃鬼は呪文ではないので轟破天より圧倒的にプレイしやすいです。以上。

 

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ちゃんちゃん

 ……一言で表すと本当にこれで終わってしまうのですが。なんぼなんでも淡泊すぎるので、もうちょっと話を膨らませましょう。

 

呪文であることの弱さその① ~メッタメタのメタ~

 刃鬼はクリーチャーで轟破天は呪文。このカードタイプの間には、どうやっても埋められないほどの差があります。細かな差異を考慮せず多面展開カードとしてのみ判断するなら、個人的にはこの点だけで、刃鬼は轟破天よりも優れたカードであるとさえ考えています。

 大袈裟に聞こえるかもしれませんが、現代デュエルマスターズにおいてこの違いはあまりに大きいもので。早い話、クリーチャーの召喚に対するメタよりも呪文の詠唱に対するメタの方が頻出・強力・多種多様なんですよね。

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20thレアの人達だけでもこの強さ
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妨げるな / 10って言うな / 刷るな

 昨今メジャーな呪文メタをサラリと挙げただけでもこの強さ。《「本日のラッキーナンバー!」》は刃鬼を咎めることも可能ですが、殿堂入りしたこのカードよりは他の面々を目にすることの方が多くなるはずです。

 これら呪文メタの何が恐ろしいかって、攻撃時のトリガーケア目的で使用されるだけで、返しのターンの呪文詠唱まで制限されることなんですよね。もののついでにリベンジのチャンス(リベンジ・チャンスではない)まで奪われてしまっては、最早延命する意味すら薄くなってしまいます。

 

 基本的にはマナを貯めないとそもそもコンセプトカードにアクセスできない仕様上、【刃鬼】も【轟破天】も数ターンの間攻めっ気の強いデッキ達からのかわいがりを耐え忍ばなければなりません。そうなればいわゆる「受け札」の搭載は必須と言って良いのですが……。

 現代において優秀な受け札は、その多くが「呪文」の看板を背負っています。素直に殴ってくるタイプのデッキには常に、それらを搔い潜るための策=呪文メタが搭載されている可能性が秘められている訳でして。

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王来編だけでもこのラインナップ
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此頃都ニハヤル物 ヒャクメ バウロマ 諜(にせ)クリカ

 それを分かっていてもなお、それでもビッグマナというアーキタイプはまだまだ呪文による防御システムに頼らざるを得ない生き物だと私は考えています。選択肢は増えていると言えど、《S・S・S》のかわりに《閃光の守護者ホーリー》や《絶対の時計 クロック》を搭載できるほど、懐に余裕は無いのです。(後者の方が強く使えるデッキももちろんありますけどね。)

 自分が何か悪さをした訳でもないのに、時代の流れが不意に牙を剥いてくる。【轟破天】、ひいては呪文を主軸にしたデッキは常にこの恐怖と向き合い続けなければならないんですね。

 

呪文であることの弱さその② ~正論パンチ~

 「呪文なら踏み倒し手段がたくさんあるからいいだろ!」という声はたまーに聞こえてきますが、残念ながら轟破天はむしろそれが別の弱みに繋がってしまっているんです。

 10コストの呪文を踏み倒す手段となると、いわゆる《ホーガン・ブラスター》のようなガチャ系、コスト無制限の踏み倒しがメインになってくることでしょう。……お察しの方もいるかと存じますがこの状況、それ《オールデリート》で良くね?なんですよね。

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先日CSでホーガンから捲られました
負けの運命が決まっているなら全部これで負けてゲラゲラしたいよ俺は

 事前の準備が何もいらない、かつ(禁断がにらめっこしている場合を除けば)ほぼ確実に、少なくとも轟破天よりは安全に勝てる手段が同じ条件で使える状況。こればかりはぐうの音も出ません、素直に「はい!!!!!」と答えざるを得ないでしょう。

 真面目に【轟破天】を組もうとする以上、《オールデリート》では良くない理由が明確な構築が求められます。目の上の瘤に悩まされながら天を仰いでガチャを回すよりは、別の方向に目を向けた方が視界も開けるはず。

 仮に早期に踏み倒したとしても、展開したいクリーチャーの充填ができていなければ。あるいは《偉大なる無駄》より不味い結果に終わってしまいかねません。刃鬼と共通の弱点ではあるものの、手札と墓地からも踏み倒しを行えるあちらの方が幾分かマシと言えるでしょうか。

 

呪文じゃないことの強さ ~時代の流れ~

 話を戻しまして。先程も軽く触れた通り、刃鬼(というよりはクリーチャー)も使用を制限されることは確かにありますが。カードパワー的にも頻度的にも、上述の呪文メタ群よりは圧倒的に採用・プレイされにくいでしょう。

 クリーチャーのプレイそのものを止める役割も、最近はそのほとんどが刃鬼を止められないギャイアに背負わされがち。むしろ近頃は自己軽減持ちの増加や数字のでっかいササゲール、果てはインチキ生物《流星のガイアッシュ・カイザー》の登場と、お上が高コストな生き物をプレイしやすい環境を整備しに来ている印象さえあります。

 特に《流星のガイアッシュ・カイザー》は、この1枚だけで甲的発言を否定する武器足り得ます。流石に刃鬼を7コストで使えるようになるのは大きく話が変わってきますからね。

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爆騰前に3積みで結果出せたから後方彼氏面してる /
感度3000倍の時に本家踏んだら多分こういうテキストになる /
裏返ったァッッ(ラブルルとの価格競争)

 明確にどちらが、と言える問題ではありませんが。轟破天よりは刃鬼の方が、時代を味方に付けられていると考えられるかも?

 

②-2.実際にプレイした場合確実に勝負を決められるのかどうか

 続いてはこの議題。話を深掘りしていくために、

  • プレイした場合、実際に多面展開を行いやすいのは
  • プレイしたターン中に勝負を決めきれるor相当に有利な盤面を構築しやすいのは

 刃鬼と轟破天のどちらなのか?という2つのテーマに分けて考察していきます。

 

②-2.α プレイした場合、実際に多面展開を行いやすいのはどちらか?

 クリーチャーを確実に、かつ大量に展開できる能力に優れているのは、間違いなく轟破天の方でしょう。ガチンコジャッジに勝つ必要も、相手のシールド枚数に気を配る必要も無い気楽さは刃鬼には無いものです。

 能動的にアクセスしやすく(比較的)干渉されにくいマナゾーンにパーツを落とすだけで、準備が整っていく簡便さ。どうあっても避けられないブースト行為の最中、片手間にピースが揃っていくのも美味しい点。メタを考えなければ轟破天の大勝と言っても過言ではないかも知れませんね!

 

 ……そう。メタを考えなければ。現代デュエルマスターズの環境に殴りこむ上で、そんなマインドを持つことは最早不可能に近い訳で。

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「踏み倒しメタ11銃士を連れてきたよ。」 /
「踏み倒しメタ11銃士?」
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「健全なデュエマの専門家、手札以外乃領域発踏倒士勇るさん造。」
「「「「うっす。よろしく。」」」」
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ソリティア潰しの専門家、複数体出ん川 実。」
「「「がんばります、よろしく。」」」
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「ヤドック式、ラドン式、逆HDM式などその他メタの専門家、もう多面展開する木無くなり康。」
「「「「よっす、どうも。」」」」

 これらメタクリーチャーの存在を無視して愚直に轟破天や刃鬼、あるいは他の多面展開カードで勝ちまくれるほどに、令和の時代は甘くありません。

 1段目の4体と相対する際、踏み倒し元のゾーンをある程度自由に選べる刃鬼であればプレイング次第でカバーもできるでしょう。このハンドリング能力は、轟破天には与えられていないもの。

 この一点だけで刃鬼の方が上位互換!甲は嘘!!だなんて言うつもりはありませんし、どちらにせよメタに苦しめられる者同士なのは変わりませんが。現代において多面展開そのものを行いやすいのは、わずかに刃鬼の方だと考えて良さそうです。

 

 仮にメタシステムに足を掬われても、マナを貯めて強力なクリーチャーを展開するコンセプト上、後々展開する予定の生き物を先んじて素直にプレイするだけで状況は好転し得るもの。これは両者に共通していますね。

 フィニッシュ時に大型クリーチャーのcipを使う前提でデッキを構築できる刃鬼は、こういった場合にも若干轟破天より有利に立ち回れるだろう、と私は思います。こればかりはフィニッシュプランの立て方と採用クリーチャーに大きく左右されるので、一概にどちらが、と断言はできませんが。

 極端な話、メタに睨まれているターンに《水上第九院 シャコガイル》や《無限銀河ジ・エンド・オブ・ユニバース》では包囲網を崩すことはできませんが、《閃光のメテオライトリュウセイ》を前借りできたらワンチャン生まれそうですよね。

 フィニッシュ前に先んじてプレイすることでフィニッシュ手段そのものを使いやすくしてくれる、かつフィニッシュ時の踏み倒しによって新たな旨味が生まれるクリーチャー。そんな人材が求められているのかも知れませんね。

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マーケティング的にも大成功の女 /
もっかいリメイクされたりしたらまたユニバースで良くね?って言われんのかな /
SEED、OPで裸の女が出てくるので飯時の茶の間が毎週ちょっと凍る

 こういった背景から、「轟破天は好きなクリーチャー展開できるから刃鬼の上位互換!」的発言にも若干懐疑的な私です。轟破天の補助・轟破天から展開して100%の力を発揮できるカードだけで勝てるデッキが組めるほど、立ちはだかるカードプールと戦略は浅いものではありません。

 

②-2.β プレイしたターン中に勝負を決めきれるor相当に有利な盤面を構築しやすいのはどちらか?

 先程触れた話と重なりますが、この点は轟破天の方が優れていると考えてよいはず。(メタカードのことを考えなければ)トップの運や相手のシールド枚数という不確実な要素に縛られず、確実な展開を約束してくれる堅実さ・再現性は刃鬼1枚には無い要素ですからね。

 相手のマナゾーンという、これまた触りにくい領域の状況に左右される懸念はありますが。一方的な展開を可能にするカードは多種多様なので、そこまで頭を悩ませずに済むはずです。

 早い話《とこしえの超人》をデッキに忍ばせておくだけで、相手のシールドの奥にまで目を光らせる必要は無くなりますからね。この利点を最大限活かすことが、現代で轟破天を輝かせるヒントになるでしょう。

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most valuable 刷るな in 王来編

 

②-3.プレイした後に勝ち切れなかった場合のリカバリー力・継戦能力の高さ

轟破天の場合

 これは自明の理ですね。(《バリバリ・ケドケド》あたりを噛ませれば一応可能ではありますが)出力の調整ができない都合上、マナを大きく失ってしまう轟破天はプレイ後の継戦能力に難があります。

 これも構築次第で低減可能なリスクですが。クリーチャー以外のカードを相当数デッキに組み込まないと、安定して「轟破天詠唱後の不自由無いカードプレイ」を実現するのは困難なはず。EXライフのおかげで防御力の確保だけはしやすくなりましたけどね。

 呪文をマシマシにしたら数多の呪文メタに分からされてしまいますし、GRクリーチャーに対する風当たりの激しい昨今はオーラも多投しにくいわけで。これらの対策もあまり現実的とは言えません。

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輝羅やTypeRでも可 / 
ドラグナー期にめちゃくちゃお世話になった人

 例えば《群蟲 シェルフォ-2》によるお手軽一方展開の場合、轟破天プレイ前後で相手のマナは全く動きません。つまり相手の戦闘力自体を削ぐには至らないため、何らかの手段で展開した盤面を洗い流されたら、リカバリーは相当困難なはず。

 故に《単騎連射 マグナム》のような相手のマナを破壊しながらの一方展開や、《水上第九院 シャコガイル》のように攻撃しなくても仕事をこなせる生物の起用が【轟破天】には求められている……と私は考えています。

 「じゃあシャコでよくね?」という声が聞こえてきそうですが。現状のカードプールにおける轟破天シャコフィニッシュ、あんまり信用できないんですよね(個人の感想です)。その辺について語っている記事はこちら

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流行んなくて良かった…… /
一番手っ取り早く轟破天でいい理由を作ってくれる奴 / 
良いんだこんな𝔼ℝ𝕆𝕋𝕀ℂな絵出して

 相手のマナから生き物を引きずり出す事がこちらにとって利になる、何かしらの意義を持ったフィニッシュプランを取れる構築。徒に盤面を賑やかにするだけで終わらない【轟破天】を生み出すには、それが肝要なんだと私は思います。置換破壊のできない2ブロでは《地封龍 ギャイア》と破壊能力持ちで我慢しましょう

 

刃鬼の場合

 プレイすることとマナが大量に減ることが必ずしもイコールではない刃鬼は、継戦能力という点において轟破天に大きく水をあけています。轟破天側では基本的にカードプレイ時に触ることのできない墓地すらも利用できる点も、燃費の良さに貢献していますね。

 序盤に使用した《アイド・ワイズ・シャッター》や《「俺たちも必ず勝つ!!」》を《メヂカラ・コバルト・カイザー》や《ベイビー「刃鬼」》としてリサイクルしつつ数体展開するだけで、「一旦耐えてから次のターンに更に盤石な盤面作りを目指す」「対面に合わせたキーカードを引くまでの時間稼ぎを行う」というプランを目指せるフレキシブルさ。

 「プレイ後即座に勝ち確定の盤面を要求されているわけではない」「最低でも1ターン相手の行動を制限できれば再展開も可能、相手の動きに合わせて対応を変えられる」という「攻め」だけではない「待ち」のプレイも選択できる柔軟性は、【轟破天】側の視点で喉から手が出るほど欲しい要素です。

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ようやくお求めやすい価格になってきた /
新規絵欲しかった

 「刃鬼はハンター種族持ちのクリーチャーを採用しなければいけないから轟破天の下位互換」という意見は多々見られますが。轟破天も轟破天で、「待ち」のプレイを選択できない都合上「展開することで即座に勝ちを引き寄せるクリーチャーを一定数採用する必要に迫られている」という不自由さから、そこまで自由度が抜きん出ているわけではないと考えています。隣の芝生だから青く見えているだけ、と言われてしまえばそれまでですがね。

 

③性能以前に存在する差 ~世間の声~

 具体的な性能差については、ここまでで考察できたと思います。それとは別件で、轟破天がどうしても刃鬼に敵わない要素が1つ。それは……

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人気のイメージ

 人気の高さ、ファンの多さです。おそらく天地がひっくり返っても、この点で【轟破天】は常に【刃鬼】の後塵を拝することになるでしょう。書いてて悲しくなりますが。

 一方は何年もヒロイックに推された主役の種族、もう一方は(人気種族であることに間違いはない……と思いますが)双極編を最後に明確なプッシュがほとんどされなくなってしまった種族。

 取り分け刃鬼に関しては、初の公認グランプリであるGP1stで並み居る人気クリーチャーを押しのけてプロモ化される人気っぷり。現代においても根強い愛好家のいるコンテンツであることは、公式・ユーザー双方の共通認識であると言えます。

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再録されまくりモテまくり
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フリーエントリーはノーカン

 刃鬼の方が轟破天よりも人気。この事実によって……

  1. グランセクトよりもハンターの方が時代に合わせた継続的な強化がされやすい
  2. 【轟破天】よりも【刃鬼】の方が直接的にコンセプトを支えるカードが刷られやすい

 という差が生じます。

 

 片や双極編以降明確に物凄い強化がなされたわけではない、同一種族内でもオーラやフシギバースなど戦略にバラつきがあるグランセクト。片や刃鬼というカードが全てを許容する懐の深さを持つハンター。

 新規カードが刷られるだけで強化されやすいのは、間違いなく刃鬼の方でしょう。デュエキングMAXで登場した新規ハンター達がそれを物語っています。

 【刃鬼】を強化するカードを刷った方が【轟破天】を強化するカードより需要が高そうなら、企業としては前者を優先して利益の向上を目指しますよね。

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こいつらが出た上でそれでも【刃鬼】が【轟破天】の劣化だと騒ぐ声を聴いたのが、この記事を書き始めた理由だったり

 

 10コストの呪文を唱えること自体をサポートするカードは踏み倒し以外で早々登場しないでしょうが(その場合も基本的に《オールデリート》がチラついて素直に喜べませんが)、【刃鬼】は新規ハンターが刷られる度に、分かりやすく強化されていきます。

 「【轟破天】は新規のデカブツが出るだけで強くなるじゃん」という意見はごもっともです。実際そうなのですが、ほとんどのデカブツは「コストを踏み倒して」「マナを枯らしながら」「cipを無視して」使用する事を想定されておらず。

 100%のスペックを発揮できずに何かしらの齟齬が生まれがちだったり、結局デザイナーズな運用をした方が強力だったりするんですよね。《水上第九院 シャコガイル》レベルで轟破天と噛み合うクリーチャーが登場することは稀です。

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ジャストダイバーが乗らないせいで除去られやすかったり /
攻撃時何も出せなかったり /
虚無だったり

 時代の進歩に合わせてドンドンプレイが難しくなるナウな刃鬼の元に、「刃鬼の召喚による多面展開でゲームを決める」という至上命令を達成するために駆けつけるハンター達。具体的に強化されやすいのが【刃鬼】と【轟破天】のどちらなのかは明白です。

 

④これからの【轟破天】はどうあるべきなのか ~心の中の「【刃鬼】でよくね?」に対する反抗~

 ここまで、刃鬼と轟破天の性能差からお互いがお互いの劣化コピーではないという主張を続けてきました。こっちを使うならあっちで良くね?という言葉を思考停止で誰かに投げられるほど、両者は酷似してはいないのです。

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「コピー」で調べたら出てきた なんでいらすとやにクローン羊のイラストが……?

 しかし。

 改めて触れますが、「マナを貯めて」「高コストなカードを1枚プレイして」「複数体クリーチャーを展開することでフィニッシュする」という大枠の中で見れば、刃鬼も轟破天も本質は同じ

 環境に挑んで白星を掴み取らんとするのなら、他方には無い強さを活かしてデッキを作る必要があるはずで。試合に負けた後で「これ【刃鬼】でor【轟破天】で良かったんじゃね?」と自分に問いかけるのでは悔やんでも悔やみきれませんからね。

 【刃鬼】がどうあるべきかは【刃鬼】の専門家に任せるとして。ここからは「現代において【轟破天】が【刃鬼】の劣化にならないためにはどんなフィニッシャーを採用すれば良いのか?」について考察していきます。

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本題

 ここまでの文章中にいくつか引いてきた下線。その部分こそが、良き【轟破天】を生み出すヒントになってくれるはずです。

  1. フィニッシュ前に先んじてプレイすることでフィニッシュ手段そのものを使いやすくしてくれる、かつフィニッシュ時の踏み倒しによって新たな旨味が生まれるクリーチャーの採用
  2. 相手のマナから生き物を引きずり出す事がこちらにとって利になる、何かしらの意義を持ったフィニッシュプランを取れる構築
  3. 「待ち」のプレイを選択できない都合上「展開することで即座に勝ちを引き寄せるクリーチャーを一定数採用する必要に迫られている」

 換言して、

  • 素出しすることでメタクリーチャーを退かせることができて
  • 相手のマナのクリーチャーが出てくる時に何かしら干渉できて
  • いるだけでゲームを終わらせる力を持った

 そんなクリーチャーをフィニッシャーに据えられれば、CS終わりに「【刃鬼】使っておけばよかったなあ……」と嘆くことにはならないはず。これらの要件を満たす生物、それは……

 

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ハンターじゃなくてよかった

 《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》です。

 

  • 召喚時に相手の盤面全てを吹き飛ばしてくれて
  • 相手のマナのコマンドとドラゴンを置換で除去できて
  • コマンドorドラゴンを持ったクリーチャーが多数存在する現代、いるだけで相手を詰ませる力がある

 という、お誂え向きな性能で【轟破天】の救世主となってくれることでしょう。マジでこいつハンターじゃなくてよかった……

 《流星のガイアッシュ・カイザー》の軽減能力に引っかかるおかげで、早期着地も夢ではありません。踏み倒しながら攻撃してきた相手に《獅子王の遺跡》と一緒に投げつけてやれば、それだけで相当優位にゲームを進められるかも?

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呪文コスト軽減版欲しいけど出たら出たでオールデリートって言われて泣く /
散々裏切られても結局この人の元に帰ってきてしまうので多分DV彼氏

 かれこれ半年弱2ブロック環境に閉じこもっている人間の意見なのでどうか話半分に、という予防線を張りつつ。《流星のガイアッシュ・カイザー》のおかげで相当プレイしやすくなったこのカード、轟破天愛好家の皆様には是非覚えて帰っていただきたいなと思っています。全然マイナーカードじゃないですけどねこいつ。

 

まとめ ~みんな違ってみんないい~

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カドショでプレゼンする人Part2

 甲的発言に対する見解と、【轟破天】がどうあるべきかについて長々と述べて参りました。

 言いたいことを改めてまとめると、

  1. 聞いてもいない、環境で勝ちたいでもない知らん人に投げる「それ○○(任意のメジャーなデッキタイプ)で良くね?」はバッドコミュニケーション
  2. 本質は同じでも細かな差異で使用感が大きく変わるので、刃鬼と轟破天を同じ土俵に無理矢理上げるべきではない
  3. 「攻め」と「待ち」を両立できて小回りが効くのは【刃鬼】、安定した多面展開をしたいなら【轟破天】
  4. 【刃鬼】の劣化にならない【轟破天】を作るならVANの採用がオススメ

 といったところでしょうか。

 重ねてになりますが、これら(特に後半部分)はあくまで個人の見解。こんな意見に流されず、「刃鬼は轟破天の劣化!!」と叫びたい方はどんどん己の道を突き進んで行くのが一番良……良くはないか……。誰も得をしないので……。

 圧倒的理論で私の散文に反論してもらうくらいの方が、私も知見が深まってハッピー。その際はどうかどうか優しく殺して。でも叫ぶならどっちかのファンの前ではやめてあげてね。

 

 ここまでご覧いただき、本当にありがとうございます。お相手は村民まんじゅうでした。